飼い主の虎太郎くん。

12/20

1993人が本棚に入れています
本棚に追加
/480ページ
「コタちゃん、全然優しくないよね」 近くにあるソファに腰掛けて、陸は不満そうに呟くと…そのまま風呂へ行った。 何か…悪いことでもしたかな? そう思ったものの、今はこのレポートが先だと、こっちに集中することにした。 カタカタとパソコンに文字を打ちながら、レポートも終盤まで差し掛かった頃 少し一息つこうと時計を見ると、もうすっかり夜になっていた。 椅子の上で伸びをして…キッチンでお茶を入れていた時。 「コ、ん…っ。コタ、ちゃ…」 風呂場から、陸の声が聞こえた。 静かにしていないと聞こえないくらいの小さな声で…多分、俺を呼んでいる。 何かあったのかと思い、机にお茶を置いてから風呂の扉を開けると 「陸…?」 「コタちゃ…って、うわぁ!」 何か、めっちゃ驚かれた。 貧血でも起こしてたのかな、とか。万が一の事を考えてたのに、陸はものすごくピンピンしてるし。 じゃあ何で俺を呼んでたんだろう…と思って、視線を下に降ろしていくと 「何してるの、陸」 呆れて、それしか言えなかった。 「仕方ないじゃん!コタちゃんがちゃんとしてくれないんだから!」 上を向いた息子に、太ももには白いものが流れて落ちていく。 自分で後ろを触って…俺の名前を呼んでたのか、陸は。
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1993人が本棚に入れています
本棚に追加