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「…物足りなかったの?」
「ちがーう!コタちゃんが後処理してくれないからだろ!」
「後処理…?」
ちゃんと拭いたよ。軽くだけど。そう言えば、陸はそれじゃダメだと怒った。
どうやら、お腹を下してしまうらしい。
そうだとすれば、俺の腹が痛いのは…陸のせいじゃないか。
「それで…何で後処理してるだけで、また大きくしてるの」
「せ、生理現象だよ」
「じゃあ、何で俺の名前を呼びながらしてるのさ…?」
「そ、それは…こんなことしたコタちゃんが、憎くて…く、口に出してたんだよ!」
顔を真っ赤にして叫ぶ陸の声は、風呂の中で反響した。
何か…エロい。
こんなに声の響くところで、陸は自分で触りながら…俺の名前を呼んでたのか。
「陸は…煽るのがうまいね」
「も、もう!早く出てってよ…!」
ガチャリ。
怒られて締め出されてしまった。
陸は絶対、ネコとやらの方が合ってると思うな。女みたいに柔らかい唇が…
キスで潤んで、その唇の色気を更に加速させるように…艶のある綺麗な声で鳴く。
勿体無いな、人を抱くなんて。
「陸、湯冷めしないように早く出てくるんだよ」
「うるさい…!早くレポートしてくればいいじゃん!」
何でちょっと怒ってるの?
そう聞いたら、また怒られそうな気がしたから、リビングへ戻って
陸に言われた通り、レポートに専念することにした。
『吉田 虎太郎は、人の気持ちが分からない。どうして怒っているのか、泣いているのか、笑っているのか__________』
陸は…感情表現が豊かだ。
すぐ怒るし、照れるし、笑うし…鳴く。
学校で先生以外と話すことがほぼ無かった俺が、陸と行動を共にするようになって
初めて、俺は変なんだと思った。
周りを見渡してクラスメイトを見ると、陸の表情がコロコロ変わるのは何も不思議なことじゃないんだって…
いつも無表情な俺が変なんだって気付いても、今更…どうやって感情を出せばいいか分からない。
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