飼い主の虎太郎くん。

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陸が羨ましいワケじゃない。 でも何か…見てて面白い人だなぁ、とは思うけど。 「吉田 虎太郎は…人の愛し方を、知らない…?これって、コタちゃんの事だよね」 「うん」 さっきまでの苛立ちは何だったのか。陸はいつもと変わらない雰囲気で、腰にタオルを巻いて出てきた。 ふわりと、ほのかに香るボディソープの香りが心地良い。 「コタちゃん…初恋もまだなの?」 「人を好きになったことが無い」 好きという感情すら分からない。そう言えば、えー!と大袈裟に驚かれた。 「陸は、好きな人居るの?」 「いるよ!たくさん!平等に、皆好き!襲って、鳴かせたくなる」 何か、俺の知る好きって感情とは違う気がするけど…陸はそういう感情を持つと好きになるのか。 俺にはよく分からないな。 胸のあたりがキューってなるとか、ポカポカするとか、いつもその人を考えてるとか… そんなもの、よく分からない。 「俺、コタちゃんの事も大好きだよ?えっち邪魔してきたり、襲ってきたりするとこは嫌いだけど」 嫌いなのに、好きなのか。 その気持ちもよく分からないな。 「でも、コタちゃんカッコイイからモテるよね。何で付き合わないんだろー、て思ってた」 「知らない奴に告白されても何も嬉しくないし、何の感情も芽生えない」 返事を聞かせて下さい、って言われたりもするけど 『存在すら知らなかった人間に告白されて、はいと答えるワケないだろ』 って返したら、いつも泣かれる。 ひどい。こんな人とは思わなかった。断るにしても、もっと優しい言い方がはったはずだ。 勝手に理想を膨らませて…普通の人なら怒るのかもしれないけど そう言われた事に対しても、何の感情も芽生えないんだ。 「俺、欠陥品なんだって」 「なにそれ」 「昔、母親に言われた言葉。俺は頭がおかしいらしい」 小さい頃からこうだから何も思わなかったけど… 母親が俺を蔑むような目で見てそう言った事を…今でも鮮明に覚えてる。
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