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五月にしては、風が少し冷たい。
空を見上げると、まるで、
あたしの胸中を見透かすかのように、
薄暗い厚いような平べったいようなどっちつかずの雲が、
風に押されて空を流れていく。
「また喧嘩したのね」
「え?」
同じように、
ぼうっと空を眺めているとばかり思っていた美悠が、
その何気なさのままぐっさりと図星を突いた。
「好きねぇ、あんたたち。
ま、それだけ一緒に暮らすのは楽じゃないってことかな。
すだっちやなっつの理想と違って」
「美悠ってさ」
胸にふつふつと湧いてきた疑問を、
あたしは口にせずにはいられなかった。
「人の心を、読んでるわけじゃないよね?」
その言葉に、
美悠は面白そうに目を見開いて笑った。
そして楽しそうに続ける。
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