episode1 卒業式

8/19
前へ
/602ページ
次へ
近くのラーメン屋で食事をし、日が隠れた後私は再び桜子の家に行った。 桜子「あ、いらっしゃい優子。待ってて、今お茶を出すから」 桜子の出したお茶をすする。 桜子「……さっきはごめんね?変なとこ見せちゃって…」 優子「いいわよ、別に気にしてないから」 桜子「…お父さんね?工場が借金の担保で取られるまでは真面目で優しかったの。なのに…」 優子「…うん、大丈夫。なんか分かってたから。お父さん、桜子と同じ顔してたよ?」 追い詰められて、自暴自棄になってしまったのだと思った。 優子「ねぇ桜子?『パチンコ勝負』って、具体的にはどんな勝負なの?」 桜子「えっ?うん、私も詳しくは知らないんだけど…なんでも制限時間内に多くの玉を出したら勝ちなんだって」 パチンコなんてやったこともない私が、本当にできるものだろうか? 優子「成る程ね。勝負の日はいつなの?」 桜子「明日の朝、駅前の『銀玉会館』で行われるわ」 明日の朝って…本当にぶっつけ本番だ… 優子「うーん、心配になってきた…」 桜子「そうだよね…でも、無理はしなくていいからね?勝負を引き受けてくれただけで…私すごく感謝してるから」 桜子はにこりと笑う。 ……自信は全くない。 できるなら降りたい。 でも、乗り掛かった船だから…なんとかして勝ってあげたいな…
/602ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加