910人が本棚に入れています
本棚に追加
――……は、っ……
一先ず終結を迎えた、と周りに気付かれないよう小さく息を吐く
が、これで終わったわけではなかった
近藤の元に集まる幹部
何やら指示をされているようだ
「行くよ」
戻ってきた沖田が告げたのは一言
今度はどこへ行くというのだろう
戦は終わったはずなのに、会津藩と共に歩みを進める新選組
辿り着いたのは天王山
小さな小屋をぐるりと囲み様子を伺う
……え
まさか……
嫌な予感しかしない
そっと近藤に近寄り耳打ちする
「まさか……ここも――?」
「あぁ、君のお陰で他の藩より早く知ることが出来た」
「……自決、すら……させないんですか?
ここに立て籠もった残兵は放っておいても勝手に死ぬんですよ!?」
周りに聞かれないよう声を抑えながら詰め寄る
「最後くらい、彼らの好きにさせてやりましょうよ」
だが、返ってきた言葉は非情、かつ正論で
「何故、敵がいると分かっているのに放っておく必要が?
それに本当に自決するとは限らない
ここで逃せばまた、被害が及ぶ」
万里は掴んでいた近藤の着物から手を離した
確かにそうだ
自分が知っている歴史では天王山に立て籠もった残兵は攻め立てられ自ら火薬に火を放ち爆死、となっている
しかし、それはあくまでも紙の上で得た知識
本当のことなど分かりはしない
それでも自分が近藤に話さなければ違っていたのだろうか
近藤は手柄を立てるために自分を利用いたのだろうか
号令と共に駆け出し、残兵を薙ぎ倒している皆を見ながら万里は一歩も動くことが出来なかった
無残にも散っていく
無駄と分かっていながら抵抗する長州藩士の姿
……ごめんなさい
誰に対しての謝罪なのか
万里本人にすら分からない
ただ、気付けば吐き出すように呟いていた
徐々に視界は歪み、その後を直視することは出来なかった……
最初のコメントを投稿しよう!