第17章 利用する目的

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――…… おかしい どうかしてる 今までならあんな暴言を吐くような人ではなかった 天狗になっているのか? ちやほやされ、持ち上げられて どこか麻痺しているとしか考えられない まるで俺らを見ちゃいねぇ あんなことでは皆が離れていくばかりだ ……何とかしなければ でもどうやって? 近藤の元から飛び出してきた原田は怒りが収まらず 一心不乱に槍を振り続ける しかし万里のことを道具扱いしたことを思い出しては頭に血がのぼり その度に首を左右に振っては何とか誤魔化す 近藤に対する不信感を 「左之?」 いつもと違う雰囲気の原田に気付いたのは斎藤 声をかけたがまるで聞こえていない もう一度声をかけようとしたがどこか鬼気迫るものがあり、躊躇った 「……」 そんな余裕のない原田を見たことがない斎藤は少し離れた場所で様子を伺う 「……っ、はぁ…… ……あ?お前、そんなトコで何やってんの」 ようやく下ろした槍、視線を感じて振り向けば斎藤がいた 「なに……と、聞かれても……」 何をしているんだろうか、と自分に問いただす斎藤に思わず笑いが込み上げる 「ぷ、相変わらず訳わかんねぇなぁお前 で、俺に何か用か?」 汗を拭いながら斎藤に聞けば 「用、という程でもないのだか…… いつもと違う雰囲気を纏うお前が気になったとしか……」 鋭い斎藤の指摘に あぁ、と苦笑いすれば少し口を噤んでから近藤のことを話してみた 「――……て、ことがあったんだ お前はどう思う?」 「……そうだな 近藤さんの言うことにも一理あるかと」 まさかの返答に驚く 「な、っ……!!お前まであいつを道具扱いするってのか!?」 「いや、そうではない 近藤さんのように上に立つものならばどんな手段を使ってでも這い上がろうとするのは道理だろう しかし、万里をモノのように扱うのは如何なものかと……」 「……以前の近藤さんならそんなこと考えもしなかったはずだ 俺はあいつの辛い顔を見たくない」 ぎり、と握られる拳は僅かに震え原田の怒りがどれほどのものかを現している 「……確かめてみたのか?」 「え?」 「本当に嫌なのか…… そこをはっきりさせねば近藤さんだけ非難してもしかたがあるまい 万が一、それが万里の望む事であったなら我々が口を挟んでも仕方あるまい」
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