第17章 利用する目的

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「確かに己しか知らぬことを聞かれて困惑しているかもしれん しかし……もし、あいつがそれを良しとするならば我々が口を挟んでも仕方がないだろう」 「そう……なんだけどさ……」 「左之は先を知ったことで己自身の手柄ではないと、人から与えられた恩賞にあやかりたくないと思っているのではないのか?」 確かにそうかもしれない 原田はそう考えた 自分たちの手柄ではなく、用意されたもので称賛されても後味が悪いだけなのかもしれない 「でもよぉ……」 「考えてもみろ 我々も敵の動向を探るのに監察や間諜を使って情報を得る それと何が違うというのだ」 「……」 斎藤の言うことは正しい 正論かも知れない それでも納得の行かない原田 「ふ。 それでもお前があいつの事を思うのであれば聞いてみろ 聞いたうえで望まぬことを強要されているのであれば止めればいい」 槍を振り、斎藤に話を聞いてもらって幾らか冷静になった原田はようやく身体の力が抜けた 「……お前はすげぇな いつも冷静で物事を外側から見れる おれは……駄目だ」 いつも感情的になってしまう そういって嘲笑する横で斎藤は目を細め、ぼそりと呟く 「それがお前のいいところでもあるんだがな」 「ん?」 「いや、なんでもない」 感情的に動ける原田が羨ましいと思う いつでも客観的にしか物事をみれない自分はなんて薄情な存在なのだろう、と こんなことで仲間といえるのだろうか 自責の念に駆られるが、それでもこれが自分自身であるから仕方がない 斎藤は気付かれないようそっと息を吐いた 「うし、じゃ聞いてみるか はじめも来るだろ?」 「そう、だな…… しかしどこにいる? 先程から姿が見えないのだが……」 辺りを見回してみても見当たらず と、いうよりも今日は一度も会っていないことに疑問を抱く 「……非番の時はいつもその辺を彷徨いているのだが……」 「ちょ、彷徨いてるって失礼だろ 犬や猫じゃあるまいし」 いや、気が向いたら懐いてくる猫のような存在だろうと思っているのは斎藤だけの秘密
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