第18章 万里の過去

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家の中に変化が現れたのは万里が中学三年の頃 両親が頻繁に言い合いをするようになった きっかけは些細なこと 父の経営する会社が経営不振に陥った 箱入り娘でお嬢様だった母は世間知らずで父の仕事の中身を知らない 知ろうともしない 「貴方はいつも仕事ばかり たまには話を聞いてくださっても……」 「今は大事な時なんだ お前に構っている暇はない」 元々見合いだった両親、そこに愛情があるはずもなく だが、決して円満な家庭ではなかったが、それでも不満はなかった すれ違いだした溝は深まるばかり それに拍車をかけるように母は知らずに心を病んでいった 母は父の代わりに京秀に固執するようになる そんな妻の変化を見て見ぬふりをする夫 それが崩壊への序章となった 「どうして万里は京秀みたいにできないの? 貴女は本当に私の子?」 「……ごめんなさい」 上手くいかない稽古事 常に不機嫌な母 執拗に浴びせられる罵倒 母の機嫌を損ねたくない万里はただひたすら謝るしかない 「父様?なにかお手伝いを……」 「ああ、お前はいい 京秀に頼む」 父の役に立ちたくて申し出れば目も合わせてくれない父 「……兄様、相談が……」 「……悪い。今、手が放せないんだ」 最後の頼みである兄を頼れば疲弊しきった顔の京秀にまでやんわりと拒絶された 次第に居所を無くしていく万里 それでも認めてもらいたくて兄と同じ名門高を目指した 兄と同じようにすれば自分も認めてもらえると信じて 全てをぶつけるかのように、ただひたすら勉強した 認めてもらいたい一心で
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