第18章 万里の過去

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新撰組のようになりたい 周りを見てみるとどうだろう 周囲は全て自分の家と懇意にしたいがために近付き 友人は優秀な兄に惹かれ、兄に取り入るために懇意にしてくる 万里に近付くものは皆、何かしらの裏があった 周りの、他人の評価だけに左右されて動いている者ばかり 何故、自分の信念のもとに動く人はいないのか 万里は気付く 自分もそうであったことを 誰も自身を見てくれるものはいない、と 自分も認められたい、と 今まで他人の評価の元で過ごしていた 誰も自分を知らない世界に行きたい 家柄など関係のないところに行きたい それでも一人はイヤだ 父や母に認めてもらいたい 矛盾ばかりが駆け巡る それが最近の万里の悩み そんな折、自宅に戻るよう両親から知らせが入る やっと孤独から抜けることができる 認めてもらえた 喜んだのも束の間 家に帰って愕然とする 「京秀が倒れた 仕方がないからお前は代理だ」 「しょうがないけれど、貴女もうちの子だから 京秀の代わりをして頂戴」 『仕方がない』 『しょうがない』 『代理』 『代わり』 かけられた言葉は万里の存在を否定しかねないものばかり それでも父や母の期待に答えられるよう奮闘する 父の付き合いで様々な場所に赴くが…… その度に思い知らされるのは兄の偉大さ 「そうですか…… 京秀君は不在で……」 「いや、この企画は京秀君でなければ……」 「お嬢様には荷が重いかと」 学生の身でありながら父の仕事を手伝っていた兄 皆が京秀の不在に落胆した 「……やはり女は駄目だな」 何度耳にしたことか その度に万里は何故、自分が女であることかを恨んだ 自分が男であればもっと認められたのか 女であるが故にこのような仕打ちを受けるのか 男女平等、とはいうものの未だ男が主導権を握る世の中 「どこへいっても皆が私を否定する」 万里はベッドに横たわる兄に泣きついた 京秀は泣きじゃくる妹の頭を優しく撫でながら言う
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