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行くあてなどない
ただ、ひたすら走った
夜の闇を
何度拭っても止まることのない涙
すれ違う人々が怪訝な眼差しを向ける
それでもひたすら走る
「……っ、はぁ……」
たどり着いたのはいつも万里が過ごす場所
「……ははっ……」
乾いた笑いが漏れる
自分の居場所はここしかないのか
闇夜にぼんやりと浮かぶのは季節外れの桜
いつもここで本を読んでいた
大きな桜の木
万里は根元にすがりつき、ひたすら泣いた
泣いたところで何も解決しないことは分かってる
それでも泣かずにはいられなかった
静かに降り注ぐ桜の花弁だけが自分を慰めてくれるようで……
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