第二話 他愛ない日常

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「誰だ! 朝っぱらからうるせぇのはっ」 律がある場所の前を通りかかった時、部屋と廊下を仕切っていた襖が勢いよく開かれ不機嫌な低い怒鳴り声が屯所内に響く。 泣く子も黙る鬼と一声に、さすがの律も今までとまることを知らなかった足を止めた。 「あ、おっはよートシ!」 「……」 後ろに般若が見えそうな土方の睨みに律は臆することなく笑顔で挨拶を済ませる。まるで近所の小学生に挨拶するような調子だ。 年上への礼儀なんてあったもんじゃない。 そんな律の行動は、寝起きの土方の機嫌をさらに悪くした。 「おはよう。じゃねぇよ。何勝手に外を歩き回ってやがる。それに、監視役の平助はどうした」 もう一段声のトーンを落とし、低く唸るように言葉が紡がれる。 「いやーなんか、早く目覚めちまってさ。平助起こすのはなんか悪い気がして、とりあえず、暇だから朝餉の準備でも手伝おうって思って」 悪そびれた様子なく、笑顔で答えた。 もともと、図書館で調べた資料や実際に訪れた八木邸で大体の屯所の作りはわかっている。
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