11.指定席

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 実香は再度「いらっしゃいませ」と言うと、水をトレーに乗せ客がついた席へと向かった。  テーブルに水を置き、笑顔を向けると客は嬉しそうに笑い返してきた。 「珈琲ですね」  実香がいうと、客はゆっくりと頷き「はい」と短く答えた。 「ブレンド入ります~」  カウンターへ戻ると、店長に伝える。 「はいよ!」  店長も嬉しそうにサイフォンをセットし始めた。  店内にあふれるように流れるコーヒーの香り。  それはいつも以上に、安らいだ香りがする。    さっきまでの寂しさが嘘のように消え、今実香の心の中を満たしているのは、春風のように暖かい、菜の花のように優しい風だった。
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