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廊下をぼんやりと見渡していても不審感を持たれないのはなんだか……転校生だと思われているのだろうか。というか、もしかして都ちゃん、友達いないのかな。ぼっち? いじめられっこ? この手のセレブ校にいじめとかあるのかなあ。……あー、いや、いじめというほどでもなくてもスクール・カーストはあるだろうな。学校への寄付金によってランク分けされてたりして。あたしはどー考えても最下位グループ決定の予感。
「土崎さん、おはよう」
そんなこと考えてたから飛び上がりそうになった。愛想笑い作ってから振り向く。
「おはよう」
「どうしたの、考えごと?」
「あ、うん……ちょっとね」
誰だか分からないミディアムボブの彼女は、にっこり笑って通り過ぎて2階の廊下を歩き出す。ついてゆく。クラスメイトじゃなかったらどうしよう。
「……おはよう」
また声かけられた。どうやら都ちゃんはぼっちじゃなかった模様だ。今度は──。
う。なんか昭和の文学少女と形容したくなる子がいる。三つ編みに、かなりレンズの大きな眼鏡、そして鼻から頬にかけて少しだけソバカス。ちっちゃい(身長が)。ついでに貧乳。あ、いや、ごめん、つい目が行っちゃった。男性経験多いもので(自分が男として生きた経験ってことですよ? 勘違いしないでよね)。
生真面目優等生と見た。というか名札してる! いやあたしもしてるんだけど、ここまで歩いている間にはしてない子も多かった。うかつに知られると、昨今は事件に巻き込まれる可能性もあるから、校内でつけるんだろうな、とうっすら思っていた。一応校則ではつけることにはなってる。ちなみに書いてあるのは苗字だけだ。鈴木さんや佐藤さんは、もしかしたら名前の最初の字とかも書いてあるのかも知れない。
そう、さっきのミディアムボブの彼女はつけてなかった。だから名前が分からない。でもこの昭和文学少女はつけてる。鳴瀬さん。ナルセさんと言えば漢字表記は「成瀬」が真っ先に浮かぶけど、「鳴瀬」さんだ。
「おはよう」
苗字まで呼びかけようとしたものの、思い留まった。もし割と仲が良い子だったりすると、下の名前で呼び合っている可能性もあるし、呼び方で怪しまれるのは得策じゃない。
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