chapter 1 JK殺人事件(探索編)

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 ミディアムボブの名無しさんは、あたしの視界の隅っこである教室に入ってゆく。そして続いて昭和文学少女も同じ部屋に。内心オドオドしながらあたしも同じく足を踏み入れる。鳴瀬さんが「…土崎さんは隣でしょ」とかツッコミ入れてくれるのを少し待ってみるけど、…なし。ということは多分、都ちゃんはこのクラスで良い。  ただ、いつものことだけど、席がドコなのって話よね。  茫然と入り口に突っ立っているあたしを見かねたのか、窓際の方の席で、鳴瀬さんがしきりに自分の隣の席をつついている。ひょっとして、と近づいて恐る恐るその机に鞄を載せると、 「……本当に方向オンチなんですね」  鳴瀬さんは小声で囁いて自分の席に戻って行った。  ……うむ、そういうことにしてあるのか。教室の中で自分の席を見つけられないのを方向オンチで片付けるというのは、なーんか違う気がするけど。  ま、結果オーライ。他の誰からも疑問を持たれていない気配なので、あたしはここで良いらしい。  椅子に座って、机の中や周りをちらっと確認する。目覚めた時に予感したように、教科書や参考資料の類がぎっしり詰まっちゃってるのもどうかと。  ただ、明らかに全教科とは言えない量。ロッカーか。うーん。教室内をちらりと見回してもそれらしいものがないので、廊下に出てみる。  来る時には気づかなかったけれど、背の低いロッカーが並んでいる。こちらは扉に各人のネームプレートがあったので、迷うことはない。自分の名前を見つけて開けてみる。  整然と、でもみっしりと、教科書やノート。ロッカーの扉の裏に時間割の縮小コピーが貼り付けてある辺り、都ちゃん、割に用意周到ね。月曜日の最初は現代文。教科書を探し出し、ノート……ああ、薄型のルーズリーフか。中をパラッとめくると、仕切りで区切られて全教科が詰まってる感じなので、そのまま引き抜いて教室に戻る。  そして予鈴。うん。いいスケジュール感。  学生の生活なんてのは、いつの時代もそう大きくは変わらない。とりあえず1日目は様子見ってことで、ひたすら大人しく女子高生しておくことにする。
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