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「それでは新郎新婦に、盛大な拍手を!」
きらきらとした光と音の中、司会者の高らかな声に従って琉可は機械的に手をたたいた。
割れんばかりの祝福ムードとは裏腹に、ただただ眠い。
「ちょお、琉可!シャキッとせんね!」
「しとるやん………ふぁ」
「今日ははとこのユカリちゃんの結婚式なんやから…」
「そんなん言うたって…ほんの2、3回しか会ったことないし」
しかもめーっちゃちっちゃいとき。
そう言って、琉可は母の目の前にあったグラスワインをひっつかんだ。二十歳になったばかりの、覚えたての酒で、嫌な間を埋めるようにそれを飲み干した。
「……会いもせんはとこなんて他人と一緒やん」
琉可自身はほんとうによく知らない人である、゛ユカリちゃん゛。母は昔から懇意にしていたようで、そのユカリちゃんの結婚式にどうしても仕事で参列できない父の代わりに、わざわざ東京まで引っ張られて来たのであった。
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