第1章 声

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母の制止を振り切って立ち上がろうとした琉可は、ステージのあたりから響いたギターの音に足を止めた。   広い式場に響く弦の音。 重なる声。 思わず振り返った。     (誰やろ……あのひと)     先ほどの友人たちの余興とは違った演出だった。新郎新婦から少し離れた小さめのステージで、アコギ1本抱えて歌う1人の男。新郎の友人か何かだろうか。 静まり返った会場に、男の声が響く。 君を彩る全ての要素を   僕が守ってみせよう   何があっても   傍にいよう   君が悲しむ全ての要素は   僕が奪うから   ありったけの愛を   愛を   愛を       切なく響く声に、胸が締め付けられた感じがした。その音と声に揺さぶられて、気づけばその男を凝視していた。    
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