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音が止んで拍手が起こる。そこで初めて、自分が突っ立ったままだったことに気づいた。
「琉可!早よ座り」
母に腕を引かれ、無理やり座らされたけれど、それでも琉可はぼんやりとしたままだった。
歌っていた男は何も言わず、一礼して舞台袖の方に下がっていった。新婦は静かに泣いていて、隣の新郎に肩を抱かれていた。歌詞や音の力に、今の自分の幸せや、新郎に歌ってもらったような錯覚を覚えたのだろうか。
そう考えて、なぜか無性に寂しく、悲しくなった。
一言で言うと、衝撃的だった。
あんなに感情のこもった音は初めてだった。
喜びなのか悲しみなのか、愛おしさなのか寂しさなのか。複雑に絡まった感情が、溢れ出しているような声。
すべてを堪えているような瞳。
全部、全部、初めてだった。
(……何か、あったんかな)
歌い終えた彼は、痛みを我慢するような表情すら見せた。そのことに、琉可の他に気づいたような人は居なかったようだけれど。
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