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『だから言っているだろう。お前は十になっていない。この国に入る資格はないのだ』
男は声を荒げてそう言った。自分は正しいのだと目の前の少年に訴えるかのように。
男の声にオミはまた身体を震わせる。その様子を見たナオキはオミの肩に手を掛け優しく微笑んだ。
少年もオミに近づきその肩に手を置いた。
『お前の名は?』
『オミ』
『オミ、いくつだ?』
『九つ』
少年はそうかと呟くとオミの目を見据えた。
『オミ、武神となるための鍛錬は厳しい。他のものは皆十になっていてお前より体も大きく、お前よりも強い。それでもお前は負けぬ自信があるか?』
『ナオト殿、次の軍神となられるあなた様が掟を破るような真似は…』
男が慌てて口を挟む。ナオトと呼ばれた少年は男を一瞥した。
『掟とは己を戒めるものであって、人を追い込むものではない。この少年にとって兄は命も同じ。命を奪われたものは生きてはいけぬ。お前は掟だからとこの少年の命を絶とうと言うのか?』
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