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ナオキはすぐに戻ってきた。その後ろには一人の少年の姿。オミはその姿を見たとたん走り寄って行った。
『兄者―』
『オミ?』
リュウジは抱きついてきたオミの身体を受け止めた。
『お前、どうして?』
リュウジはそう聞きながらも、その瞳を潤ませていた。泣きじゃくるオミはその問いに答えられない。
だがリュウジには分かっていた。オミの心細さが。辛さが。寂しさが。
それがこれからも続くことがオミには耐えられなかったのだと。
『オミ、一年だけ耐えてくれと言っただろう』
そう言いながらもリュウジは零れ落ちる涙を堪えきれなかった。まだ腕に納まる小さな弟の身体をしっかりと抱きしめてやった。その不安が消え去るように。
『リュウジと言ったか』
一人の少年がリュウジに向かって声を掛けた。リュウジはその姿を見て驚いた。
それはまさしく次の軍神。武神の長となるべき人物だったからだ。
『ナ、ナオト殿』
リュウジはまだ泣き止まぬオミから離れナオトの前に跪いた。
オミも兄の姿に倣いナオトの前に膝をつく。
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