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リュウジはこの国に入るときオミに言った。
『俺が武神となればお前を護ってやれる。だから、一年だけ耐えてくれ。十にならねば、あの国には入れぬ決まり。俺は強くなり、来年ここに来るお前を待っている』
兄はそう言って自分に背を向けた。その背中が泣いていた。それをオミは気付いていた。
兄も自分を置いていくのは辛いのだ。
一度は兄を見送った。だがオミには耐えられなかった。たった一年。だがその一年はオミにとって何十年の歳月に思えた。
オミは傷だらけになりながら兄の後を追った。そしてやっと国の入り口に辿り着いたのだ。
だが、そこに立ちはだかるのは国の掟。この国で軍神に仕えるために鍛錬を受けられるのは、十歳を迎えたものだけ。
入り口を護るものは容赦なくオミの願いを撥ねつけた。
だがオミは兄と離れて生きてはいけない。必死で国に入ろうと男に向かってその小さな身体をぶつけていった。
『いい加減にしろ』
男はオミを怒鳴りつけるとその身体を投げ飛ばした。その形相にオミは恐怖し震えが止まらなくなった。
いつも自分を助けてくれた兄はここにはいない。オミは絶望を感じていた。
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