ピロトーク:ピロトークを聴きながら

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***  周防さんの病院からの帰り道は気持ち的には何でもなかったのに、自宅に近づくにつれて見えない不安がひしひしと僕を襲ってきた。  すぐ傍に郁也さんがいるというのにだ。  不安を悟られないように俯きながら歩いていたら、そっと肩を抱き寄せられる。 「今夜の晩御飯は涼一の大好きな、野菜のいっぱい入ったカレーにしてやるからな。楽しみにしてろよ」  抱きしめている手にぎゅっと力が入って、更に郁也さんとの距離が縮まった。  いつもはこんなに敏感じゃない人なのに、どうして僕が不安がっているのが分かったんだろう?  俯いてた顔を郁也さんに向けると、柔らかく微笑んでくれる。その笑みを見ただけで不安だった気持ちが、すっと拭われていった。 「――郁也さん、いろいろとありがとね」 「何、言ってんだ。これくらい、どうってことないだろ。しかもお相子だろ?」 「お相子?」  僕が首を傾げると外だというのに、掠め取るようなキスをする大胆な郁也さん。 「俺が寝込んだときに、一生懸命に看病してくれたろ。実はすっげぇ嬉しかったんだ。しばらく仕事が忙しくて一緒にいられなかった分、涼一が付っきりで離れずに傍にいてくれたから」 「僕も同じ気持ちだよ」 「いつまで休めるか分かんねぇけど、家に帰ったら何をするかを話し合おうぜ」  うきうきしながら提案してくれたけど、正直したいことなど思い浮かばなかったので、家でのんびりすることになった。
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