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「……昼間の出来事がフラッシュバックして、鳴海さんのセリフがいちいち頭にこびり付いているんだ。小田桐センセの壊れて行く様も、ついでに見せてもらうよ。そのキレイな顔がどんな風になるのか、じっくりと楽しませてもらうからなぁんていうのも、あったっけ」
「やめろよ、そんなの忘れろ……」
「ねぇ僕って、フェロモンがだだ漏れしてる?」
自嘲的に笑って俺を見上げた涼一。そんな辛そうな笑みなんて見たくはない。
「男を惑わすフェロモンがだだ漏れしまくっているらしいよ。何でも髪をキレイに伸ばせる男性は、女性ホルモンが普通の男性よりも出てるんだって」
「やめろって!」
声を荒げた俺に、身体をビクつかせる。
しまった――怖がらせちゃ、いけなかったんだった。
「悪い……つい怒鳴っちまった。涼一が怖い思いをしたっていうのに、俺が怖がらせてどうするんだ、まったく――」
「――郁也さん。さよなら、しようか……」
その言葉に、くっと息を飲む。突然何だっていうんだ!?
一瞬錯乱したものの気を取り直す。涼一は薬の副作用で、精神状態がかなり不安定になってるだけなんだ。
「ばっ、バカなこと言ってんじゃねぇよ。ショックなことがあって、混乱してるだけだお前は。今夜は傍にいてやるから安心して寝ろ。な?」
強引に身体をベッドに横たえさせて、添い寝をしてやる。俺の胸元に顔を寄せて、瞳を閉じた涼一。労わるように、背中をポンポンしてあげた。
この日は無事に話は終了して涼一自身も、その後は落ち着いて眠ることができたのだった。
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