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「うっ……こんな僕だけど、ずっと傍にいてもいい? 迷惑かけちゃうかもだけど……」
郁也さんに対しておんぶに抱っこな自分がどうしてもイヤで、離れたほうがいいって考えた。考えたのだけれど情けないことに、ひとりで立っていられる自信が全然なかった。
――郁也さんなしでは、もう生きてはいけない――
「さっきも言ったろ。俺はお前のために存在してるんだ。迷惑なんて、かかってこい! 受けてたってやる」
僕の頬に伝う涙を、掬うようにキスをする。
悲しみも辛さも全部を受け止めてくれるようなそれに、胸がぎゅっと絞られるみたい。余計に涙が溢れてしまった。
「郁也さん……っ、……うっ、ありがと、う……」
「ん――?」
慈愛の眼差しが、冷たくなった心を溶かしてくれるみたいだ。
「今回のことも辛かった過去のことも全部、郁也さんと一緒にいるための糧だと思ったら、無駄じゃなかったのかもなって」
「そうか……」
いつも言葉少なめだけど、僕に響く言葉を言ってくれるね。
「僕がこんな風に強くいられるようになったのは、郁也さんのお陰だよ。ありがとね」
今は頼りないけど、きっと立ち直って強くなる。郁也さんがいれば、きっと――
「とりあえずだな、お前泣きやめよ。まるで俺が苛めてるみたいだろ」
「うん……。ゴメンね」
涙を拭おうと郁也さんから手を離した途端に、いきなり押し倒される身体。ベッドの上で、ばふんと弾んでしまった。
驚いて声を出せずにいると、すかさず身体に跨ってきた。圧し掛かられる重みが、とても愛しく思えるよ郁也さん――
「涼一頼むから、もうさよならなんて言うなよ。俺みたいな野暮な男を上手く扱えるのは、お前しかいないんだから」
「ふふふ。こんな僕を扱えるのも、郁也さんしかいないよ」
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