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「んもぅ、ももちんったら、今はお昼休みなんだよ! 大人の急患、連れ込まないでよぅ」
高校の同級生でアレルギー専門の小児科病院を経営してる、周防 武(すおう たけし)の元を訪れた。
「いい加減、ももちんと呼ぶのを止めてくれ。コイツ、すっげー熱があるんだけど診てくれないか?」
周防の文句を無視して勝手に診察室に入ると、拾い物をベッドに優しく置いてやる。
「うわぁ、これは――」
「なぁ? かなり具合悪そうだろ」
「ドストライクだね」
聴診器を当てて診ようともせずなぜか腕を組んで、しげしげと眺めた。
「今、流行の病気なのか?」
その言葉に反応すると首を横に振り、俺の顔を見る。
「このコってば、ももちんのタイプでしょ。清楚でキレイな感じの美青年」
俺の頬をつんつん突ついてから、いそいそ患者を診だした。
長い付き合いなので俺の趣味を理解している、唯一の友人なのだが――
「ドストライクまでは、いかないけどな」
そっぽを向いて言うと聴診器を患者の胸に当てて、またまた首を横に振る。
「似てるんだよねぇ。高校のとき、ももちんが好きになった中学生に」
「あー? こんな感じだったか?」
「似てる似てる。もっと気品が漂ってたけど、あれは有名私立中学校の制服を着ていたからだね」
言いながら体温計を脇に差し込んで、こっちを見上げた。
「どこで拾ったの? 相変わらず面倒見がいいよねぇ」
「すぐ傍の、スクランブル交差点でぶつかってきたんだ。フラフラしてたから間違いなく病気だと思って、ここに連れて来ただけ」
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