ピロトーク:はじめての共同作業

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***  気だるい――でもイヤな気だるさじゃない。満たされて、ふわふわした感じ。 「……大丈夫か?」  掠れた声で、郁也さんが聞いてきた。 「うん、大丈夫だよ。ありがと」  僕も掠れた声で返事をする。久しぶりだったせいもあって、思っていた以上に乱れてしまった。何だかハズカシイ。 「大丈夫か、そうか。ならもう一回」 「へっ!?」 「おまえ、自分の言ったことを忘れたワケじゃないだろうな。好きなだけ食べていいって言ったろ」  確かに―― 「もっと感じさせてやる、覚悟しろよ?」  艶っぽく笑った郁也さんの顔が、グイッと近づいた。その顔を両手で押さえつける僕。 「しっ、締め切りっ!」 「はあぁ?」 「今ここで全体力を使っちゃうと、締め切りに間に合わなくなっちゃうかも」 「…………」  編集者である郁也さんを止めるには、この言葉が一番だろうと考えて使ってみた。  かくてその後コンテストに応募するまで一切の情事を封印し、締め切りに間に合わせることに成功した!  しかも郁也さんとの恋愛のお陰で応募した作品が大賞を受賞し、作家としてデビューすることになった。  僕のデビューをきっかけに、一緒に暮らすことになったのだけれど―― 「もうこれで、ウダウダ言わせないからな。きちんと俺が管理して締め切りに間に合わせつつ、しっかりとその身体も堪能させていただくことにしよう」  なぁんて恐ろしいことを、口にしたのだ。 「えっと、ほどほどにしないと書けなくなっちゃうかもよ?」 「大丈夫。ほどほどの力加減で、抱いてやるからな。フフフ」  今までお預けしてしまった分、しょうがないと諦めて、さっさとこの身を提供した。だけど執筆した作品に糖度が加えられたのは、いうまでもない。
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