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それに、私はその魔法陣に見覚えがある。
無数にある魔法の中でも最も初歩的な魔法。
簡単な魔法陣で有りながら威力の高い現象を引き起こせられる魔法。
魔法陣の系統は火系魔法。
有効範囲は約半径五十メートル。
だったはず。
その魔法陣から漏れ出した魔力から、これらの一つ一つに大きな魔力が込められていることが感じ取れる。
魔法が発動すれば、きっと私の体は一瞬で焼け焦げてタダでは済まない。
肌を焼かれる熱さと痛みと苦しみを味わいながら死んでしまうだろう。
それはちょっとイヤかな。
痛いのとか、嫌いだし。
「これでどうかしら?
流石の貴女でも、この状況を覆すことは不可能でしょう」
私から離れて魔法の被害が及ばない安全圏から私に話しかける声が聞こえる。
その声の主は二十代前半の若い女性。
この人こそが、今の状況を作り出した張本人。
見上げると、闇に紛れて黒いマントを羽織っているその女性は、偉そうに電柱の上に立っていた。
今日は風が吹いていない。
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