プロローグ

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「そうでしょうね。 貴女にはもう降参するしか道は残っていない……って、はっ?」 女性は先程の自信満々な表情から、拍子抜けしたような間抜けな顔になり、私を見る。 そんなに私の言った言葉が信じられないのかな。 「嫌と言ったの、聞こえてなかった?」 親切にもう一度言ってあげる。 「いや、貴女っ、この状況が見えていないの? 貴女の生死は私が握っているのよ?」 女性は慌てて私の周りに展開されている魔法陣を指差して言う。 見えてないわけないよね。 嫌でも視界に入るっての。 でもさぁ、言っちゃ悪いけど、この人はこれ位で勝った気でいたんだ。 この程度の魔法で私に勝てると思っていたんだね。 自分と相手の力量の差も分からないのかな。 「え?なに言ってるの? 補助装置がないと魔法が使えない魔導師なんてそんな大した事もできないでしょ? そんな自慢げに言われても困るんだけど。 見てるこっちが恥ずかしい」 女性が羽織っているマントは魔法を使う時に使う魔力増幅器のようなものであり、一般的に補助装置と呼ばれている。 補助装置を使う魔導師は主に二通り。 極端に魔力が少ない者か、力を貪欲に求めて今ある強い魔力を更に強くしようとしている者かのどちらか。 恐らく、この女性は前者だと思う。 だって、魔法陣を展開するのも素人みたいに遅かったし。 というか、素人だろ。
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