一緒にお風呂に入りました

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 ティルアの嫁ぎ先であるセルエリア。  大浴場はなんと混浴だった。  基本的に殿方と婦人は時間をずらし、入浴するものの、中には夫婦で湯を共にすることもあるわけで。 (お約束ですね)  湯気湧き立つ露天。  湯水に浮かべた花弁の香りが辺り一面にかぐわしい匂いを広げる。  循環水流と吹き出るジェット水流が浴室内の音という音を掻き消してしまう。 「ん……っ、む、むむぅっ!  ね、ねぇ、やっぱりやめようよ……」  弱々しい涙声が空間を割る。  短めの栗色の癖のある髪は湯でしんなり落ち着いている。  胸に走る古傷は三年前の事件によって削ぎ落としてしまった乳房の皮膚を寄せてできたもの。ひきつれが痛々しい。  アスティスと結ばれてからというもの、ティルアは胸元にコンプレックスを抱えるようになっている。  上気した肌がほんのり桜色に染まる。  紅玉の瞳がとろんと潤む。  湯水の波紋がぱしゃ、と一つ上がる。 「ふぁ……っ!!」  ティルアは身体をビクッと震わせた。  彼の腕が後方から腰に回される。    逃げ腰になり、湯船から脱しようと底に向かう手はすぐにももう一方の腕にさらわれ、指を絡めて捕縛される。  波紋が幾つも上がる。先程よりも激しく波立つ度に、ティルアは自由が利く右手で腰元に回る彼の腕を掴む。 「あっ、ああ……ん、はぁっ、だっ、だめっ……!」  上下に揺さぶられる度に、湯水の中で密着するものが擦れ合う。 「……ティルア、静かに。  人が来る」 「…………!」
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