中世のデートは難しい……

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 陽を吸ってまばゆい光を放つプラチナの美髪。  不遜さを醸すアスティスと揃いのインディゴブルーの聖瞳は斜めに弧を描いた垂れ目。  似ているようで違う二人。  片や、大国の王、片や多くの国教であるディアーナ教の大司教。  白地のクロークを脱ぎ捨てたラサヴェルは白地のシャツに黒のフィットパンツという軽めの装い。  トレイを手にしている様からどうやら客として来たようだ。 「ここ、座ってもいい?」  言うが早いか、ラサヴェルはティルアの隣席にトレイを置いた。 「あの、ラサヴェル兄さ――――」 「勿論! いいよね、アスティス」  断りを入れようとした矢先に入るティルアの言葉にアスティスはため息をついた。  勿論、その意味をしっかり理解するラサヴェルはふふ、と笑う。 「ティルアのパルフェ、おいしそうだね。  僕のトレイにはガレットとタルト、クグロフがあるよ」 「えぇっ! うわぁ~、すごーい!!  ラサヴェルはお菓子に詳しいんだね」  トレイには二種の焼菓子とフルーツのタルトが載せられていた。  キラキラ輝く対象がアスティスからラサヴェルへと移る。  その様子を眺めるだけのアスティスが面白いはずがない。 「ティルア、俺、やっぱりパルフェ貰う。一緒に食べないか」 「わぁ、すっっごくおいしそう!  タルトっていうんだ……へぇ~」 「ふふ、このタルトはね、白と黄の桃がふんだんにトッピングされた新作なんだ。  ティルアすごく食べたそうだから、一口あげようかな」  ティルアはもはやラサヴェルの動く手に目を奪われている。  色白のきれいな指先がシルバーフォークを握り、さくりと切り込みを入れる。  そのさまを一瞬たりとも見逃さないというように、緋色の瞳はじっと後を追っている。  完全に無視されてしまったアスティスは愕然としたまま、ラサヴェルへとふと視線を流して――思わず目を見開いた。  アスティスと目が合ったラサヴェルはふふん、と含み笑いを浮かべた。 「さあ、ティルア、口を開けて。  食べさせてあげよう」 「わぁ! いいの?」 「ま、待て、待てティルア。  俺もタルトが食べたくなった!  今から注文しよう。  そうすれば一口と言わず、一切れ全て食べられるぞ」  アスティスのその言葉に、今まさに口を開けようとしたティルアの動きがぴたっと止まる。
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