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被っていたふとんが宙を舞った。
「ひゃん、……えっ!?」
一気に開けた視界。
月明かりの夜闇に浮かぶ人影。
「あ、ああ、あああっ……!」
ティルアは一瞬で我に返る。
爆発するような羞恥がそこにあった。
金の髪、インディゴブルー。
準礼服のカーキ色のコートを身にした彼は取り上げた布団の端を手に、にっこりと笑っていた。
「ひゃああああっ!
あ、あ、アスティス……、き、今日はお泊まりじゃなかっ――」
「予定ではね。
どうしても君を一人にしたくなかったから無理言って終わらせてきた……でも、まさか、こんなことをしてるなんて」
「あっあっ……あ、こ、これは…、これは――」
アスティスの目線がティルアの指にぬらぬらと輝くものを捉える。
ティルアはすぐにも両手を後ろに隠し、ベッドの上に座ったまま後ずさる。
彼の身体がのっそりとベッドの縁から上がってくる。
「ご、ごめんなさ……っ、私、私」
袖を通した彼の服はティルアのもので濡れてしまっている。
伸びてきた手がティルアの身体をさらい、あっという間に膝上に乗せられてしまった。
ふわっと香る彼の匂いに泣きそうになる。
ティルアは腕を広げ、彼の背に手を回した。
「ティルア……俺とのことを考えて……くれてたんだね」
「うん……アスティス……ごめんなさい。
ふと淋しくなっちゃって、それで……っ」
紅玉の瞳に涙を浮かべるティルアの唇に彼の唇が触れる。
「うん……淋しくさせて、ごめん」
極上のとろけるような笑みが降り注いだことで、ティルアは安堵の笑みを浮かべた。
と、同時にティルアの視界が変わる。
アスティスの顔がすぐ真上にあった。
「淋しくさせたぶん、たくさん可愛がってあげる」
「……っ、やだっ、はずかし……」
逃げ腰になるティルアの両手に自らの指先を絡めて動きを封じた。
そして今宵も紅玉姫は色情に染まったインディゴブルーに閉じ込められる。
二話目 おわり
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