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個人的に徹平の兄やその恋人には、良い格好をしたいと思えるようになってきた俺。
なので、今回の野菜の収穫には、みんなには言わないけど力が入っていた。
こんな俺でも、農業部なんだって大きい顔をして、徹平に良いとこ見せたいなあって下心がほとんど隠れず見えてたのかもしれない。
ちょうど世の中がGWという浮かれた頃だったかなあ。
その時の俺は、嫌々入っている農業部の活動として、仕方なく言われたように夏野菜の苗を植えたんだ。
初めて植えた野菜の数々が、今になって穫られるのを待っているかのような出来映えなんだわ。
俺の中での自信作はトマト!
あんな美しい赤い宝石のような輝きを俺は知らないよ。
『もうすぐ穫ることができるんだ』期待して徹平にも話してたんだ。
なのに、いざ穫り入れとなったら……
昨日まであったのに見当たらない!
「あれ?ここにトマトのいいのがありましたよね?」
俺はトマトが生っていた場所を指差す。
「ああ、おそらくカラスかヒヨドリの類いか……」
「ないなら、たぶんそうだろう」
「は?」
どういうことを言っているのかわからない。
おそらくキョトンとした顔をしている俺を見て、先輩たちが笑う。
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