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「なあ、慎之助は冷やかされたりせえへんだ?大丈夫やった?」
「ふ…あれでも粋な計らいだったんだろう。それに俺を冷やかそうなどと企てるのは剣道部の先輩くらいだ。心配は要らん。千聖こそ嫌な思いはしなかったのか?」
「ちょっと教室とか廊下で冷やかされたけど…俺は嬉しかったさかい…」
「そうか…嫌な思いをしていないのなら俺はいい。ところで、何かを期待しているなら他所をあたれ。盗み聞きは趣味が良いとは言えない」
(バ…バレて…)
「なんや、気づいとったんかいな」
徹平が立ち上がり階段を降り始めたので、俺も慌てて後を追った。
このとき初めて、話をしていたのが副会長と書記さんだと知った。
「今日の慎ちゃんの熱烈スピーチは感動したわ。1年ビビってたで。なあ、千聖ちゃん」
「もう、言わんといて…恥ずかしやん」
書記さんは照れた赤い顔で嬉しそうに副会長の後ろに隠れる。
(か…可愛い…)
「千聖をからかうな」
「わかっとるって。慎ちゃんの大事な千聖ちゃんに手は出さへんて。慎ちゃんの強さは兄貴から聞いとるさかいな」
徹平は眼鏡を外し胸ポケットへ入れた。
(知り合い?)
そんな徹平を見上げるとニコッと笑う。
「この慎ちゃん、兄貴の恋人の後輩でな。この正月にWデート楽しんだんや」
「「なっ…」」
二人はまた声をハモらせて赤い顔で徹平を見る。
息ぴったりだね。
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