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「遅いぞ!一年!」
校舎の裏に急場凌ぎで建てられたような小屋が建ち、その前にモンペ姿の上級生達が立っている。
「遅れてすみません」
「まあ、逃げ出さなかっただけ合格だ。逃げた二人は追っているからじきに確保できるだろう」
部長とおぼしき俺の背中にシールを貼った先輩が、シールを貼った相手の名簿らしき紙を見つめボールペンで○をつけている。
「えっと、瀬戸だったな。入部届けを書いてもらおう」
「え゛?入部…決定なんですか?」
おそるおそる訊ねる俺に、
「あ゛ぁ?何か不服なんか、おのれは!」
鍬を肩に担いだ人が声をあげた。
真っ黒なクチバシのようなマスク、細いサングラスを掛け、スキンヘッドに眉毛はなし…
足には地下足袋を履き、モンペのウェスト部分に巻かれたベルトには鎌が差し込まれ、腰にはナタだのノコギリだのたくさんついている。
「あの…農業請け負いの専門業者の方ですか?」
「アホか!儂はここの生徒じゃ、どアホ!!シバくぞゴルァ!」
「すみません!一番気合いの入った格好をしてるから…てっきり…」
「ほう…おまえ、なかなか見所があるのう」
(何の見所だろう…)
ビクビクしている俺の横では、同じように背中にシールを貼られた生徒が二人ガタガタ震えている。
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