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「僕…体力に自信が…」
不意に意を決し、小太りの方が目をつぶって言った。
「ふっ…大丈夫だ。俺を信じろ」
(それにどんな意味があるんだ!?)
小太りの方は首を振っているのを笑顔でかわされ、親指に朱肉を押し付けられると、先輩に固められながら紙を押し付けられた。
もう一人、長身で痩せ型のヤツが逃げようとして手を握られた。
「僕…無理です」
「辛いのは最初だけだ」
「ギャーァァァ!!」
手際のいい先輩達により、あっと言う間の出来事だった。
「で…入部届けを…」
笑顔の先輩達が次は俺を取り囲み、輪を縮めながら視線を外さず見つめている。
「喜んで書かせていただきますぅぅ!」
俺は涙を流しながら入部届けを受け取り名前を書いた。
(俺には到底無理だ。三日くらい頑張ってるふりをして辞めてしまおう)
「先に言っておくが、途中退部は認められない」
「なんで!?」
思わず叫んだ俺に、先輩達の冷たい視線が突き刺さる。
「辞める気か?」
「聞いてみただけです…すみません」
ああ…ここでもまた、俺は人生の分岐点を誤った方に…
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