336人が本棚に入れています
本棚に追加
「嫌なことはないんだよ。みんないいヤツばっかりだし。体力ない俺のこと心配してくれるしね。だけど、俺だけ場違い感が否めないって言うか…俺から輪の中に入りきれないんだ。だから相談とかまだ出来なくて…」
しゅんとしている俺に徹平は『まだ初めやさかいなあ』と苦笑いする。
「でもね、親交を深めようってみんな疲れてるのに毎日プロレスごっことかしてくれるんだ。体力作りにね」
「は?」
「だけど俺負けてばっかりで悔しいんだもん。レスリング部に相撲部にラグビー部…力じゃ敵わないよ。寮に入った初日からずっと連敗なんだ。押さえ込まれてばっかり」
負けた日数だけ指を折り、またため息を吐く。
「ちょ…待てや。毎日プロレスごっこやっとんか?」
「そうだよ。絆愛では武道に力入れてるって、みんな部活で疲れてるはずなのに『始めるぞっ』て声掛けてくれて俺の相手してくれるんだ」
「えっ……と、普通の押さえ込みなんか?」
「普通?何が普通で何が普通じゃないのかのわからないよ。たださ、くすぐったくて笑っちゃうんだよね」
徹平は突然立ち上がり叫んだ。
「慎ちゃん…慎ちゃーん!」
「うるさい!!なんだ…いきなり!それに…」
「そこにおったんかいな」
徹平はするすると生徒の中をかき分け、意外と近くにいた副会長の後ろに立った。
(なに?なにがあったんだ?)
副会長は立ち上がり『ダメだ』と言うように徹平に首を振っている。
そのうち書記さんが間に入って副会長に何かを言い、二人で何度かやり取りした後膨れっ面でプイッと横を向いた。
副会長は嘆息してから、諦めたようにしぶしぶ何度か頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!