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あんなトラブルあったってのに、何事もなかったかのように粛々と式は進行し、とりあえずは無事に終わりはしたが…
俺はここで初めて、人生の分岐点で道を誤ったことに気づいた。
あ、俺の名前がまだだった。
俺は瀬戸典孝(せと のりたか)。
俺の夢は、世のため人のため…そしてゆくゆくは、この日本のためになる人間になること。
そりゃあ、甘っちょろく格好いいことにも憧れてはいる。
まだまだ中学卒業したばっかだから。
でも、理想は高く現実は低くの人生だから、ここらで一発逆転狙ってこの学校を選んだんだけど…
ミスった!
ここは、俺のような平凡人間には向いていない。
もっとこう、スポーツや教養で抜きん出た何かを持ってるとか、よっぽど行く学校がないとかじゃないと、普通は来ない。
ガビーンと頭を鐘木で打たれたようなそんな時だった。
入学式の後、先生達の紹介と挨拶も終わり、先生達や来賓の人達は出て行ってしまった。
生徒達だけが残され、係の人らしい上級生が慌ただしく『ようこそ、絆愛へ』と書かれたホワイトボードを押してやってきた。
俺達の正面にやって来ると、クルッとホワイトボードを回転させる。
すると、マグネットで留めたプログラムらしき紙が上下逆さまになっており、新入生の中では先程までの緊張が解けたのか吹き出す者も出た。
実際、俺も笑ってしまったのだが…
焦ってホワイトボードを回転させ、諦めたようにキャスターを利用して回している姿に、ついにはみんな大笑いし始めた。
普段ならきっとこんなことないんだろうけど、過度の緊張の後だから仕方がない。
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