第1章

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 「浩二、 代わりに出てよ」いつものように下の名前で呼んだ健一が、 浩二に向かって電話に出るよう促した。  「社長あてにかかってきたのですから、 とりあえず出てみたらいいんじゃないですか?」浩二が、 冷静な口調で言葉を返す。  「あのぉ、 電話保留したままなんですけど……」電話を取り次いだ加藤が困惑した表情を浮かべた。 浩二の視線もデスクのパソコンに戻っている。  健一は、 恐る恐る受話器を上げた。  「お待たせしました。 社長の小島ですが」  「私、 池袋労働基準監督署の安藤と申します」受話器の向こうから低く落ち着いた男の声が伝わってきた。
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