第1章

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 雇用管理分野の相談を担当する小林雄一郎のブースにも、 起業を志望する学生たちを中心に集まっていた。 相談者たちは、 雇用に関する法律や従業員との接し方などについて質問をしていた。  マネジメントやマーケティングなどの起業に役立つカリキュラムを多く取り揃えている明光学院大学は、 他の大学と比べて、 起業コースを選択する学生の割合が高かった。  小林は、 現在六十九歳、 キャリア四十年のベテラン社会保険労務士だった。  労務管理のエキスパートとして数多くの相談に接してきた小林だったが、 七十歳の誕生日を機に、 現役を退くつもりでいた。 事務所の代表も十二年間彼のもとで修業を積んできた後輩の社会保険労務士に譲り、 彼自身は、 妻と二人で田舎に引っ越し、 スローライフを楽しむ計画を立てていた。
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