第1章

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 本来であれば六十五歳で引退しスローライフに入るという約束を妻と交わしていたのだが、 延び延びになっていた。 小林のことを信頼する顧問先の会社から「まだ辞めないでほしい」という声が多く寄せられていたからだ。  今日の仕事も、 彼の実績を高く評価した大学側から直々に指名されてのものだった。  相談者の列は途絶えなかった。 会場全体に熱気がみなぎる。  そんな中、 小林のブースに福元という男子学生がやって来た。  起業志望の福元は、 従業員を雇うときのルールについて質問をした。 小林が、 雇用に関する法律や労務管理のポイントについての説明をする。 福元が、 懸命にメモを取る。 後ろに並んでいた学生たちも、 思い思いに小林の話をメモしていた。
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