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そっと微笑んだ桜川は、
彼のことを待つ母子の顔を思い浮かべた。
そんな二人の背後に、
別のシルエットが浮かんでくる。
シルエットが、
ある顔を映し出す。
もっとも彼の近くにいる女性の顔だった。
桜川の顔から笑顔が消えた。
切なそうな表情に変わる。
心の中の声がささやく。
「あいつには、
オレが必要なんだ。
オレも、
最後まで責任を取らなければならない。
これは、
男としての義務なんだ……」何度も何度も発した言葉だった。
小さく息をついた桜川は、
再び歩き始めた。
桜川の目的地は、
駅から歩いて五分ほどのところに建つマンションだった。
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