しかるべき報いの中で

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しかるべき報いの中で

  今は一人になりたかった 集落から少し離れ、砂浜の見える海辺に寝そべる 青い空をゆったりと雲が流れる 波の音は静かで優しい 時が静かに過ぎてゆく 私はただ、空だけを眺め 今までの罪を思い浮かべていた けれど、涙はとうに枯れていた 「どこだって、空は同じなんだな」 私はそんな当たり前の事に今さら気づく たどり着いてから7日目 ここにはもちろん、電気やガス、水道も無い 辺境ともいえるこの場所には、文明的な物は何も無いかと思えた ここの人々は便利さとは程遠い不自由な生活の中にいる いや、そんな事はない あの集落の人々を見よ そこには、生きる事への不自由な姿など無い それは料理人である私にとっても同じだ 火があり水がある 空には鳥が舞う 野を猪が駆けている 海草の打ち上げられる浜辺 粗くも堅実な作りの畑 あの者達が話している言葉は私にはまだ分からない だが、私がこの鍋を振るえば料理が生まれ たちまち人の輪が出来る そこから生まれる喜びと好奇心は 言葉ではなく表情で伝わる そして、それは私の喜びとなり新たな生きる力となる 遠くで子供達が手を振る 「ここで料理人として生きてゆくのも悪くはないな」 私は起き上がり、笑顔で手を振って応える 今となっては私の大切な物となった、それ その柄をしっかりと握りしめる 私は歩いてゆく そう、時間はたっぷりある 長い、果てしない程の時間が… これから ここから再び始めよう 私は    ・  ・  ・       
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