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所変わって駅前の喫茶店
窓の向こうには行き交う新幹線が見える
ここは主人公がいる街から少し離れた、わりと大きめの街の駅前だ
そこには四人の男女が何やら打ち合わせをしている姿があった
だが、その四人の姿は少し異様だ
修行僧のような出で立ちをした大柄な男
歩行者天国でよく見かけるような中性的な道化師
パリコレの新作衣装のようなセレブな衣装を纏った女性
その中で一人、立ち上がって手紙を読み上げていた男がいる
その姿はヘビメタとロックバンドの中間のような中途半端に残念な衣装
だが、この男
すでに作品の冒頭に登場している
自販機の隙間で、ボソボソ独り言を言っていたあの男だ
そしてどうやら、彼がこのメンツを束ねているリーダーのようだ
男「東京のレストランだね
洋食屋 宇宙的未来(うちゅうてきみらい)」
女「この店、知ってるわ
東京の超が付く老舗(しにせ)の洋食屋よ」
大男「超?」
道化「老舗って言っても、洋☆食屋なら百年くらいじゃない?」
男「いや、この店
元は京都から越してきた蕎麦屋らしい
そして、この店…」
女「何よ、続けなさいよ」
「実は…縄文時代からあるらしい
創始者はウッホゴッホ」
道化「マジ? なにその名前、猿☆人?(笑)」
バンド男が手にしていたノートPCを開き、こちらへ見せる
「ホームページを見ると、どうやら大マジのようだ…
江戸時代後期に開業した店かと思われていた
だが、開業間もなくして庭の敷地から遺跡が出たらしい」
大男「遺跡?何のだ?」
男「…創始者が調理する姿を描いた大量の縄文式土器と…
…つまり、その…オムライスの化石が」
女「え?オムライス?」
男「この時の様子を創業者の息子、数ノ助和雄はこう記している」
「使用人、井戸掘りにて
棒付き鍋を振るいて卵を調理する様が描かれた壺を掘り起こす
それらの壺、他に多く出土せり
合わせてみれば
まるで調理の様を描かれた指南書なり
残念ながら傷み激しく
其の詳細は不明なり
壺には書き順逆なれど
我が屋号に同じ-宇宙的未来- と彫られておる
隅には -うっほごっほ- とも読める烙印あり
それが作り手の名と思えり
調理の一つは おむらいす なる文字にも読めるが意味知れず
思うに
とほい昔に創始者、この地を離れ京に店を構え
子孫である父が江戸へ引き寄せられ、ふたたび同じ地へ店を構えたのかも知れぬ
誠に数奇なるが、かような運命であったのだろう」
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