数奇な世界

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  「それを集団心理と言うんです これは、一種の催眠ですから」 「でも、味覚測定機はしっかり反応してるでしょう ほら、変わってますよ、数値」 今度は科学者が割って入る 「くだらないトリックです この水に人の味覚を変える薬が、」 「まだ、誰も口にしてませんが」 「じゃあ、調理用の水でしょう」 さっきから黙って見ていたパスタ斎藤がここで参戦する 「だ~か~ら~それは私が封を切った水だって言ってんだろ、ハゲ!」 「な!ハゲは関係無いでしょ!ハゲは! これはズレてるんじゃない、こういう髪型だと何度言えば」 「デパートのマネキンか!」 「ええい!やってられるか!」 「あ、ズレた」 「後でキッチリ話しを付けてやるからな!」 「いい大人がちょっとした事ですぐにキレる これは右傾化の兆候です パスタだのマカロニだのと、麺の始祖である中国を軽視するからこのような」 司会「いきなりあんた誰!」 「通りすがりの赤いジャーナリストです 通常の3倍怪しい者です」 「ガードマン何やってんの!」 「邪魔が入ったが科学は絶対なんです!」 「この測定機、あなたの研究室のですよ それに、実際にあなたもパスタ食べたでしょ?」 「味なんてわかるか! そもそも私はうどん派だ!パスタなんて大っ嫌いだ!」 司会「誰、コイツ呼んだの!」 「わ!セットが崩れる!」 パスタ斎藤がスタジオのセットにぶら下がる 司会「ちょ、斎藤さん!なにやってんの」 パスタ斎藤がお笑い芸人の顔に戻り、会場で暴れ始めた つるの「やば!マジやば!」 画面の下をテロップが流れる もう番組は終了だ 声「どこ!」 斎藤「これでも食らえ!」 声「どこー!」 彦摩呂「ちょ!背中に何か入った!」 六三郎「コラ、斎藤!食べ物を粗末にするんじゃない!」 斎藤「違います、これはあの男の、上のパスタです」 声「わ、私の髪ッ!どこ――ッ!」 もうグダグダだ 5本目のビデオを見終わる頃には 既に日も暮れかけていた 結局、先輩は飽きたのか1本目で「トイレに」と、言ったまま戻って来なかった まあ、先輩にはそういうとこがある とりあえず、今日は上がりにしよう  
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