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「みさきぃ、準備できたかぁ~?」
ピンクのエプロンを首からかけ、朝から弁当のおかず作りに勤しむ僕。
「もうちょっとぉ」
そんな僕が見守るリビングでひとり、お着替えと格闘中の姪みさき、4歳。
ワケあって親元を離れ、母親の弟である僕の家で同居中。
ったくねーちゃんのやつ、自分のガキの面倒くらい責任もってやれよな。ばかやろー。
「あつっ」
炒めていたウインナーの油が弾いて、顔に飛んでくる。あまりの熱さで涙がかすかに目元に浮かぶ。
「だいじょーぶ?」
「うん、大丈夫だから。お前は早くお着替え星人を倒しちゃいな」
「わかった、たおすー」
僕の方を見て静止していたみさきは着替えを再開し、僕は跳ねた油をエプロンの端で拭って、作業を続行する。
姪が衣服と、僕がウインナーと格闘を繰り広げるという絵面は、はたから観察すればなんとも滑稽な様に違いないだろう。
「長かった」
しかし今日ばかりはそんな些末なことをいちいち気にすることもなく、忙しない朝のキッチンで、僕はしみじみとこうひとりごちた。
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