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「‥‥‥ふっ」
懐かしいな、まだあれからそんなにたってないっていうのに。
あの頃を回顧して図らずも笑みが零れる。いきなり笑い出した僕を見て生徒達はさぞかし気味悪がってるだろう。
「さて、僕はそこまで熱血教師のつもりはないんですが、これから暑苦しくなったらごめんなさい。熱かったら窓を開けていいから‥‥‥って、もう開いてるか」
教室にかすかに漏れる忍び笑い。まあ、シーンと静まり返るよりはましだろうか。
「まず、これからこの学校で青春を送る君達に、この言葉を贈りたい」
すうっと胸に酸素を取り込み、両手を教卓の角に預けて、僕は一拍置いてからある思いを言葉にした。
「学校において僕達教師、大人はみんな脇役だ」
誰かさんの受け売りを、自慢げに口にする自分に恥ずかしくなりつつも、話を続ける。
「主役は君達生徒ひとりひとり。誰が上とか下とか、そんなのは関係ない。各々に紡ぐべき物語があって、そのひとつひとつに充実したページ(日々)が何百枚も挟まれていく」
いきなり意味不明なことを語りだす教師を、彼らはうざがるだろうか。
多分うざがるだろう。
誰だってそうだ。
自分だってそうだった。
そういうのはなるべく勘弁して欲しいかった。
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