若手教師(脇役)武蔵野は、プロローグを語る。

7/9
112人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「ここはひとつ、僕の青春時代の話を聞いてくれないか?心配するな、こうはいっても十何年も昔の話じゃないぞ。つい2、3年前の話だ」 「それって別に、青春時代の話じゃないんじゃ」 「そうかもしれないな、相沢。けど、青春時代が学生時代と同義なんてことは、どんな辞書にも載ってない」   名前を呼ばれた相沢は肩をピクリと小刻みに奮わせる。 「そんなに緊張しなくてもいい。別にお前を捕って食うわけじゃないんだし。ただ、僕の話にちょいと耳を傾けてくれれば良いわけだ。つまんないと感じたら昼寝してもいいしな。いま、ここで」 「え、遠慮しときます」 「他に何か言いたい者はいるか?入学式の後にやってもらう個人の自己紹介を、今やりたい奴がいるなら許可するぞ」 そう伝えた途端、あからさまに嫌々ムードが辺りに漂う。 学生の頃は僕も嫌だったな、自己紹介。嫌なことを率先してやろうなんてあの人達みたいな酔狂な輩はここには当然いないか。 「ないなら、僕の思い出話を聞いてもらおう。なぁに、僕の語りがよほど下手じゃなきゃ、そこそこは楽しめるはずだ。なにせ登場人物のやってることが全部ハリウッド映画並の迫力だからな。学校の屋上にヘリで飛んできたり、謎の組織を勝手に学校の中につくったり」 「‥‥‥すげぇ」 お、早速誰か食いついた。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!