序章

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男は地面に上がると仰向けになって倒れ込んだ。荒い息を整えようとゆっくりと息を吐く。口元が痙攣したように小刻みに震えて止まらない。 一体どうして自分は海に堕ちたのだろう。考えても分からない。 いや、待て…そもそも自分は誰なんだ?自分の事が思い出せない。 男はこめかみに手を当て必死で自分の事を思いだす。だが彼の頭に浮かぶのは自分に対するやりきれない思い。敗れた夢、そして絶望…。 だが自分はあの暗い海から這い上がった。このままではダメだと、そう思ったはずだ。 男は体を起こした。まだ息は荒いままだがさっきよりも体は動く。 突然体が重くなった。まるで重力が自分だけにのしかかってきているような感覚。 男は自分を抑えつけようとするその力から逃げようと這いつくばって進む。 だが一歩動くだけでも体中の筋肉を総動員しなければいけない。ただでさえ海から這い上がるために体力を使い果たしている。 男が力尽きようとした時、彼らが現れた。
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