残酷な世界

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「おとうさん!もうやめて!」 私はもう手も足も出なかった。 すると… 暴れていた母が急に 大人しくなってしまった。 母は目を開けたまま、 静かになっていた。 「おかぁさん?おかあさん!!」 男はすっと立ち上がり、 私に近づいてきた。 私は黙って警戒しながら 引き下がる。 「おかあさんがこうなったのは、 お前のせいだぞ? 俺のせいじゃない。 お前のせいだ。」 父の目からは溢れんばかりの 涙を流していた。 「………。」 男は大声をあげて泣き、 自分の胸へと突き刺した。 どぴゅー…… 雨の音と 突き刺さったナイフの音は なんとも聞き苦しく、 私はその場に立ちすくんだ。 私は父に刺さったナイフを 抜こうとした。 抜こうとするたびに出てくる血。 抜こうとするたびに苦しがる父。 ざーーーーー 雨いっそう増す。 ガチャ。 「……。」 振り返ると警察と 思われる人たちが たくさん家に入り込んだ。 血まみれになった 母と父とそして私を見た警察は 少し息を詰まらせていた。
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