Overture

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 僕の国と言ったが、僕は皇帝などではない。  僕の名はクオーツ・ジェス。神聖帝国アルミナの神聖騎士だ。  説明ばっかりになるが聞いてほしい。神聖騎士とは、皇帝直属の騎士のことである。すごく要約して言うと、超難関の狭き門である。  神聖騎士は皇帝直属の部下として、主に帝国の治安を守っている。昇進し皇帝の側近となれば、近衛としての道も開ける。政治的に意見する者も出てくる。  僕は晴れてこの春、二十歳にして神聖騎士になることができたのである。高倍率を乗り越えて!  僕の人生を左右するほどの事件が起こったのは神聖騎士となって二か月ほど後のことだ。 「はーい、罰ゲームはクオーツにけってーい!」  始まりは嬉しそうな先輩の言葉だった。僕は下っ端騎士として、お調子者の先輩に付き従っていた。この先輩、どうもエリートとは程遠いおちゃらけた人で、休憩時間の度に僕に「遊び」を強要するのだった。  毎回、先輩は罰ゲームを用意する。今回もそうだった。  毎度、恥ずかしいことをさせられているので慣れてきていた。パンツ一丁で宿舎を一周するとか、結構偉い人の部屋に行って一発ギャグをかますとか。  だから今回も、そんなものだと思っていた。
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